FtM
マッチングアプリで声をかけた彼女はもともとはフェムネコだった。
性癖と言うわけではなくて「職場とかでさ、ネコやってた方が楽だったから」とのことだった。
女性分布の多い平均年齢が高い職場で、オツボネ様的存在に睨まれたら、もう会社に居場所はなくなる。男性社員と話をしているだけで「男に媚を売っている」「あざとい」などと陰口を叩かれる世界だった。だからと言って、バリバリと仕事にまい進すれば、それはそれで自分の地位を脅かすものとしてマークされてしまう。結局、そんなオツボネ様方々に気に入られるには、フェムネコになることが手っ取り早かったらしい。
「ちょっと甘える仕草を見せるだけで何事にも融通を図ってくれたから、ちょろかったなあ」
・・・悪女だ。悪いネコだ。
でもまあ考えてみれば、男性女性問わず人間社会とはそんなものかもしれない。権力を持っている存在に調子を合わせたり、気に入られようとする行動は普通に誰しもがやっていることだ。
「しばらくはフェムネコやってたなあ。SNSもチェックされていたから、遊ぶのはもっぱら裏垢だったね」
表では異性には興味ない風のフェムネコをやっていて、裏ではマッチングアプリで男を漁っている。漁られた僕が言えることでもないが、こっちの方がよっぽどあざとい感じはする。
「うん。オツボネさんたち集団リストラされたし、もうフェムネコ偽る必要もないからね。こうして堂々とマッチングアプリで遊べんだよ」
自分を偽ることを否定はしないものの、隠れ蓑にされた生粋のビアンさんたちに対して失礼だよね、とは思う。本当に彼女のことを好きになったフェムタチさんの気持ちを考えたらやるせない気持ちにはなる。
「でもさ、やっているうちにフェムネコも悪くないなーと思ったよ。きれいなお姉さんに声を掛けられたらやっぱりテンション上がっちゃうし」
そうは言っても、今ではこうやって僕みたいな男と会っているのだから、やっぱりフェムネコはフェイクでしかないのだろう。
さて、この悪いネコちゃんをどうやって退治してやろうか?と、彼女にフラれて泣いていたフェムタチの姉のことを思いやりながら、僕はこぶしを握り締めた。
レズビアンのセックス
フェムリバ